こんな方におすすめ
- 持続可能な水産業ってどんなのがある?
- 持続可能な水産業を目指すためにやるべきことを知りたい人
- 小規模・中規模の水産企業でもSDGsを含めた事業をしたい人
wideepについて
wideepでは水産専門のwebコンサルを行っております。
水産業の現場を理解しており、『話すだけ』『見るだけ』で成果に直結する戦略を提案・実働いたします。
持続可能な水産業とは?
持続可能な水産業とは、水産資源と環境に配慮し、将来にわたって安定的に水産物を供給できるよう管理・運営する漁業や養殖業のことです。
企業の場合は過剰な漁獲を避け、生態系のバランスを保つための漁獲量や漁法の規制、環境に優しい養殖方法の採用などが含まれます。
また、地域社会の経済的安定や食品の安全性向上にも寄与し、次世代に豊かな海の恵みを引き継ぐための重要な取り組みです。
私たち消費者も、サステナブルシーフードを選ぶなどの行動を通じて、この取り組みを支えることができます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
世界と日本の水産資源の現状
世界と日本の水産資源は、過剰漁獲や環境変化により減少傾向にあります。
持続可能な利用を目指すため、現状を正しく理解することが重要です。
- 世界の水産資源の状況
- 日本の水産資源の現状
上記についてそれぞれ解説します。
世界の水産資源の状況
国連食糧農業機関(FAO)の報告によれば、2020年の世界の水産物生産量は約2億1,400万トンと過去最高を記録しました。
一方で、世界の水産資源の約35.4%が持続可能な水準を超えて漁獲されているとされています。
特に、ニシン・イワシ類などの多獲性浮魚類は、環境変化により資源水準が大幅に変動しやすいとされています。
このような状況を踏まえ、世界各国で持続可能な漁業管理や養殖業の推進が求められています。
日本の水産資源の現状
日本の総漁獲量は、1984年の約1,282万トンをピークに減少を続け、2016年には約436万トンとなりました。
特に、マイワシなどの主要魚種の漁獲量が大幅に減少しています。
水産庁の評価によれば、2017年度の日本周辺の漁業資源のうち、低位水準にあるものが46%を占めており、資源の減少が深刻な問題となっています。
持続可能な水産業を実現するためには、適切な資源管理や環境保全の取り組みが急務となっています。
持続可能な水産業を支えるため水産会社にできること
持続可能な水産業を実現するためには、水産会社自身の積極的な取り組みが不可欠です。
- MSCやASCの認証制度の取得
- 水揚げされた水産物を無駄にしない方法を見つける
- CSV戦略を優先する企業でサプライチェーンを構築する
水産業者が取り組むべきことを具体的を紹介します。
MSCやASCの認証制度の取得
持続可能な漁業や養殖業を推進するために、MSC(海洋管理協議会)やASC(養殖管理協議会)の認証取得が重要です。
これらの認証は、環境に配慮した漁業・養殖業の証明となり、消費者からの信頼を得る手段となります。
例えば、MSC認証は、持続可能な漁業を行っていることを示す国際的な認証であり、取得することで市場競争力の向上が期待できます。
一方、ASC認証は、環境や社会に配慮した養殖業者に与えられる認証で、持続可能な養殖業の推進に寄与します。
これらの認証を取得することで、環境保全と経済的利益の両立が可能となります。
水揚げされた水産物を無駄にしない方法を見つける
漁獲された水産物を無駄なく活用することは、資源の有効利用と経済的利益の向上につながります。
また、副産物や廃棄物を飼料や肥料として再利用することで、廃棄物の削減と収益の増加が期待できます。
さらに、三陸ラボラトリ株式会社のように、廃棄されるホヤを商品化する事例もあります。
このように、創意工夫によって新たな価値を生み出すことが可能です。
CSV戦略を優先する企業でサプライチェーンを構築する
CSV戦略とは、企業が社会的課題の解決と経済的価値の創出を同時に追求する経営戦略です。
例えば、環境保全活動に積極的な企業や、地域社会との共生を重視する企業と協力することで、持続可能な漁業や養殖業の実現が加速します。
また、サプライチェーン全体での環境負荷の低減や、労働環境の改善など、多方面での効果が期待できます。
これらの取り組みを通じて、水産業者は持続可能な水産業の推進に貢献できます。
環境保全と経済的利益の両立を目指し、積極的な行動が求められます。
持続可能な水産業を支えるため消費者にできること
持続可能な水産業を支えるため、消費者の行動が重要です。
- サステナブルシーフードを選ぶ
- 海洋プラスチック問題について理解する
- 魚介類を無駄なく食べる
上記の消費者ができる具体的な取り組みを紹介します。
サステナブルシーフードを選ぶ
持続可能な漁業や養殖業で生産された水産物を選ぶことは、資源の保護に直結します。
MSC(海洋管理協議会)やASC(養殖管理協議会)などの認証マークが付いた商品は、環境に配慮した方法で生産されています。
また、地元で獲れた魚介類を選ぶことも、輸送によるCO₂排出削減に貢献します。
これらの選択は、持続可能な水産業の推進に繋がります。
海洋プラスチック問題について理解する
海洋プラスチックごみは、海洋生物や生態系に深刻な影響を与えています。
例えば、マイバッグやマイボトルを持参することで、使い捨てプラスチックの削減に貢献できます。
また、プラスチック製品の適切な廃棄やリサイクルを行うことで、海洋への流出を防ぐことができます。
これらの取り組みは、海洋環境の保全に繋がります。
魚介類を無駄なく食べる
購入した魚介類を無駄なく消費することは、資源の有効活用に繋がります。
さらに、魚の骨や頭を使ったスープやだしを取るなど、部位ごとに工夫して利用することも有効です。
これらの取り組みは、持続可能な水産業の支援に繋がりつつ、家計にとっても良い影響をもたらします。
持続可能な水産業が実現するメリット
持続可能な水産業の実現は、社会や環境に多くのメリットをもたらします。
- 安定した水産物の供給
- 魚介類の多様性を維持
- 食品の安全性の向上
- 地域経済の活性化
- 環境保全への貢献
上記の具体的な利点を紹介します。
安定した水産物の供給
持続可能な漁業管理により、魚種の乱獲を防ぎ、資源の再生産を促進します。
安定供給は、消費者が新鮮で多様な魚介類を継続的に享受できることを意味します。
また、漁業者にとっても収入の安定化につながります。
このように、持続可能な水産業は、供給と需要のバランスを保つ上で重要な役割を果たします。
魚介類の多様性を維持
適切な資源管理は、生態系のバランスを保ち、魚介類の多様性を維持します。
多様な種が共存することで、生態系の健全性が保たれます。
多様性の維持は、環境変化や病害への抵抗力を高める効果もあります。
したがって、魚介類の多様性の維持は、環境と人々の生活の質を高める要素となります。
食品の安全性の向上
環境に配慮した漁業や養殖業は、水質や生息環境の改善を促します。
安全な水産物の供給は、消費者の健康を守る上で不可欠です。
さらに、品質の高い製品は市場での評価も向上します。
地域経済の活性化
持続可能な水産業は、地域の雇用を創出し、経済の活性化に寄与します。
安定した漁獲量は、関連産業の発展を促します。
地域の特色を生かした産業振興は、住民の生活の質の向上にも寄与します。
環境保全への貢献
持続可能な漁業は、海洋環境の保全に直接的な影響を与えます。
適切な漁獲量の管理や生息地の保護は、海洋生態系の健全性を維持します。
環境保全は、将来世代への責任でもあります。
持続可能な水産業への取り組み事例
持続可能な水産業を目指し、日本各地で企業規模の大きさに関わらず、さまざまな取り組みが進められています。
- 三陸ラボラトリ株式会社の廃棄される『ほや』の商品化
- 『持続可能なサプライチェーンガイドライン』国分グループの方針
- 青森県十三湖のシジミ漁業
- 静岡県榛南地域の藻場再生プロジェクト
- ニッスイの完全養殖本マグロ生産
それぞれ具体的に事例を紹介します。
三陸ラボラトリ株式会社の廃棄される『ほや』の商品化
三陸ラボラトリ株式会社は、これまで廃棄されていた規格外のホヤを商品化する取り組みを行っています。
地元で収穫されたホヤの中から規格外のサイズを剥きホヤとして加工し、東北を中心に量販店や小売店へ販売しています。
新鮮さを保つために水揚げから6時間以内に処理しており、安全で高品質な製品づくりを心がけています。
この取り組みにより、廃棄物の削減と地域経済の活性化に貢献しています。
『持続可能なサプライチェーンガイドライン』国分グループの方針
国分グループは、持続可能なサプライチェーンの構築を目指し、「持続可能なサプライチェーン方針」と「持続可能なサプライチェーンガイドライン」を策定しました。
このガイドラインでは、法令遵守や人権の尊重、環境保全など、サプライチェーン全体で取り組むべき項目を明示しています。
これにより、ビジネスパートナーと協働し、持続可能な社会の実現を推進しています。
ガイドラインには、商社ならではの「関わるメーカーや量販店などで取り組むこと」を推奨しています。
青森県十三湖のシジミ漁業
青森県の十三湖では、シジミ漁業が盛んに行われています。
地元の漁業者たちは、資源管理のために漁獲量の制限や漁期の設定などを行い、持続可能な漁業を推進しています。
これらの活動により、シジミの安定供給と地域の発展に寄与しています。
静岡県榛南地域の藻場再生プロジェクト
静岡県榛南地域では、海藻の生育環境である藻場の再生プロジェクトが進められています。
地元の漁業者や行政、研究機関が協力し、藻場の造成や保全活動を実施しています。
この取り組みは、地域の水産業の持続可能性を高めるものとして注目されています。
ニッスイの完全養殖本マグロ生産
ニッスイ(日本水産株式会社)は、完全養殖による本マグロの生産に成功しています。
天然資源に依存せず、卵から成魚までを人工的に育てることで、資源保護と安定供給を両立させています。
この技術は、乱獲による資源枯渇の問題解決に寄与し、持続可能な水産業のモデルケースとして評価されています。
持続可能な水産業を未来に残すために
持続可能な水産業を未来に残すためには、私たち一人ひとりの行動が重要です。
これらの取り組みは、結果的に私たち自身の節約や支出の削減にもつながります。
例えば、地元で獲れた旬の魚を選ぶことで、価格が抑えられ、新鮮で美味しい食材を手に入れることができます。
また、使い捨てプラスチック製品の使用を減らし、再利用可能な製品を選ぶことで、長期的なコスト削減が期待できます。
これらの取り組みを通じて、豊かな海の恵みを次世代に引き継ぎましょう。
まとめ
持続可能な水産業とは、過剰な漁獲を避け、生態系のバランスを保つための漁獲量や漁法の規制、環境に優しい養殖方法の採用などが含まれます。
持続可能な水産業を支えるため水産会社にできることは、
- MSCやASCの認証制度の取得
- 水揚げされた水産物を無駄にしない方法を見つける
- CSV戦略を優先する企業でサプライチェーンを構築する
上記が挙げられます。
持続可能な水産業を支えるため消費者にできることは、
- サステナブルシーフードを選ぶ
- 海洋プラスチック問題について理解する
- 魚介類を無駄なく食べる
上記の通りです。
持続可能な水産業が実現するメリットは、
- 安定した水産物の供給
- 魚介類の多様性を維持
- 食品の安全性の向上
- 地域経済の活性化
- 環境保全への貢献
などが挙げられます。
持続可能な水産業への取り組み事例として、
- 三陸ラボラトリ株式会社の廃棄される『ほや』の商品化
- 『持続可能なサプライチェーンガイドライン』国分グループの方針
- 青森県十三湖のシジミ漁業
- 静岡県榛南地域の藻場再生プロジェクト
- ニッスイの完全養殖本マグロ生産
など様々な取り組みがあります。
持続可能な水産業を未来に残すためには、私たち一人ひとりの行動が重要です。