水福連携の体験談として参考になる部分を中心に、数回に分けて書きたいと思います。
スタート時は水産部分に関しての構築がほとんどとなっておりますが、後半になるにつれて福祉との構築が出てきます。
是非ご覧ください。
パート1は商品企画から量販店への商談までの準備期間をご紹介いたします。
この記事を書いてる人
- 農林水産省推進、『ノウフク・アワード2022』水産企業で歴代初の受賞
- 『とうほくSDGsアワード2023』優秀賞
- 人の心を様々な角度から理解し、導くことが得意
- サラリーマン、経営者の経験(3社)を持つ1児のパパ
この記事を読んでわかること
- 水福連携における販売先への提案する手順
- 類似商品との差別方法(付加価値)
- 販売先との関係性の構築方法
他に真似できない仕組みづくり
他にできない仕組みと聞いて難しさを感じるかもしれません。
しかし、難しく考える必要はありません。大事なのは自分たちだからできるアイデアや方法です。
物流構築
我々は物流会社としての豊富な経験を持ち、効率的な運送業務を提供してきました。
各卸問屋の特徴や納品スケジュールにも精通しており、スーパーマーケットへの納品時間など、正確に把握しておりました。
また、卸問屋との緊密な連携を通じて、効率的な商品供給とスケジュール管理を実現しました。
スーパーのニーズは消費者のニーズ
スーパーのニーズに的確に応えることができる製造方法、1日のタイムスケジュールを組むことにより高鮮度・高効率な供給を構築することができました。
サプライチェーン
サプライチェーンの詳しい説明はこちらの過去のブログからどうぞ
https://job-joy-hack.com/supply-chain-management/
サプライチェーンを構築する際、最も重視した点は安定的な供給を確保する方法です。
具体的には、仕入れの窓口を県魚連に限定せず、漁協や漁師からも直接供給できる体制を整えました。これにより必要な場合に他の水揚げ地からの供給を受けることができる状態を維持し、急な発注量の増加にも対応することができました。
原料単価が少し高くても安定をとる
養殖とはいえ、漁師が海に出る以上、波が高かったり潮の流れが早すぎたりすると、命に関わる危険が伴います。
そのような状況に遭遇した場合に備えて、対策を持っている漁協もあり、我々にとっては、このような仕入れ先は非常に価値があります。
通年での生出荷
海水温の上昇や秋刀魚や鮭の不漁などから分かる通り、従来の旬の概念が崩れていました。
漁師やメーカーにとってこの状況はとても深刻な問題であり、かなり苦しい状況でした。
我々としても衰退気味の業界で、さらにコロナ禍で、全く新しいビジネスで勝負するかとても悩みました。
しかし発想を変え、夏が長くなっていること、日中の気温が25℃程度であると県内のほやの需要があることに注目しました。
従来はお盆くらいまでが販売期間とされていたほやを、どこまで売り続けることができるか実験をしました。
すると実際に10月まで販売をすることができたのです。
また、1年の中で最も売れないとされていた12月の後半にも、北東北を中心に試験販売を試みました。
その結果、当初の予想に反して沿岸部のスーパーが我々の殻ほや販売することとなり、さらにはそのスーパーでも午前中で完売したという報告まで上がり、大成功となった。
この実験を通じて、通年でのほやの販売には十分な価値があると考えました。
商品が価格競争に巻き込まれる理由
量販店のバイヤーは売れる商品を常に探しています。売れる商品とは消費者ニーズを満たした商品であり、その商品をしっかりとアピールするところまでがポイントとなります。
世の中に同じ商品が数多くある
例えばサバの缶詰と検索すると数え切れないほどのメーカーが出てきてきます。もしその分野で勝負する場合のライバルの数となります。
時代背景やニーズの変化、トレンド等によりチャンスがくる場合もありますが、多少の味の変化や高級サバを使用した高級缶詰ではまだまだライバルが多く、新規参入で持続可能な状態をつくるのは難しいと考えます。
そんな中で我々が選んだ商品は剥きほやでした。
岩手県の剥きほやを製造しているメーカーを調べたところ、震災以降どのメーカーも製造をやめており、ライバルが少ない市場でした。
製造をやめた理由を深く調べてみると、人不足で剥き作業を行う人がいないこと、宮城県産のほやが安く出回っているのが主な原因でした。
人不足の解消と宮城県産への対抗策がカギ
原因がわかれば対策を取ることができます。
まず宮城県産への対抗策として、宮城県産のほやが市場に出てくる前にスーパーとそのシーズンの商談を行いました。
これは魚連や漁協、漁師との信頼関係をしっかり作ったからこそできる方法です。
シーズンを通じてのサイズ感や値頃感を決め、他が入れないような状態を作ることができます。
人不足に関しては先に人を集めるのではなく、需要が大きくなってから集めるしかないと考えており、あまり深く考えておりませんでした。
類似商品との差が無いと大量生産と比較される
大きなメーカーであれば機械を導入し、大量に低コストで製造することができます。
しかし、現代のニーズを照らし合わせると少量の小分けされた商品で必要な分だけ購入することが増えております。
それに伴い、大量生産、大量販売は現代と合わないと考え、比較されないようにする必要がありました。
実は日本が得意な繊細な仕事
そこで我々はSDGsの考え方に則した商品として、大量に作れないことを付加価値とし、他との差別化に成功することができました。(詳しくは後ほど別の記事でご説明いたします)
消費者に商品のストーリーに伝えきれていない
商品開発は簡単ではなく、さまざまな試行錯誤の上完成します。
そして、量販店に並んでる商品全てに、開発に至るまでのストーリーが存在します。
人は感情で判断することが多い
商品のストーリーをいかに消費者に発信し、共感してもらえるかが購入のポイントとなります。
SDGsを企業の取り組みとして提案
ほやの販売実験を終え、物流の構築やサプライチェーンの構築などさまざまなことを、同時進行で進めながら県内のスーパーへ商談をしました。
結果的には大手量販店(イオン様)、大手商社(国分東北様)、盛岡市中央卸売市場の仲卸(田清魚店様)がこの取り組みに賛同していただき、販売することができました。
商品がない、単価も未設定
商談の時点では実際に製造はしておりませんでした。
我々がどんなに素晴らしいと思っていても消費者に届かなければビジネスとしては失敗です。
なので今までの準備は殻ほやの試験販売以外は全て机上論でした。
当然、商談も商品サンプルもなく、具体的な商品単価もなしでバイヤーとお話しをさせていただきました。
我々の取り組みはSDGsを理解していることが前提での商談でした。バイヤーの中にはSDGsを初めて聞いたという方もおり、かなり苦戦しました。
商品の話をするために、SDGsの必要性を1時間かけて説明したこともありました。
サプライチェーンは構築済み
商品以外は全て調整が整っていたが、バイヤーがSDGsに興味があるかないかが、商談の焦点となっていました。
しかし、商品も単価もない状態での商談で取り組みに共感してくれる会社はなかなかありませんでした。
そんな中で田清魚店(清次郎)様、イオンスーパーセンター株式会社様、国分東北株式会社様が、取り組みを高く評価していただきました。
岩手県のスーパーに商談した結果
イオンスーパーセンター様ではイオングループ内でも異例の3社同一規格、同一値段にて復興10年の節目である3.11より販売開始したい、というお話しを後日いただくことができました。
国分様からも同じくらいのタイミングで是非取り扱いたいとありがたいお話をいただきました。
田清魚店(清次郎)様からも是非お店で地元の方たちに味わっていただきたいと言っていただきました。
CSV(社会や環境にとって良い方法で利益を生むこと)という考え方で提案することにより、結果として取り組む必要性を強調することができ、日本でも最大手の量販店や商社に対してアピールする事ができ、実際に取り組みとしてやらせていただくことができました。
これはビジネスで大事なのは会社の規模ではない。という証明にもなったと思います。
さいごに
水福連携、SDGsは水産業に浸透しておらず、量販店との商談に苦労しました。
しかし、考え方をしっかり学び、自社の強みを活かしたアイデアを生み出すことができれば難しいことではありません。
今までの水産業のやり方を変えたいと思っている方、福祉側から水産に挑戦しようとしてる方、新しい価値観を見出そうと日々勉強している方など、ゼロからの構築、持続可能な経営を目指しませんか?