こんな方におすすめ
- SDGs目標12「つくる責任つかう責任」の取り組み例が知りたい!
- 大きな会社以外で取り組んでいる会社はあるの?
- 生産から販売までの流れがどうなっているのか知りたい!
この記事を書いてる人
- 農林水産省推進、『ノウフク・アワード2022』水産企業で歴代初の受賞。
- 人の心を様々な角度から理解し、導くことが得意なメンタルデザイナー【心のデザイナー】
- サラリーマン、経営者の経験(3社)を持つ31歳。
この記事を読んでわかること
- SDGs「つくる責任つかう責任」における三陸ラボラトリの取り組み
- 9割が捨てられていた海産物
- SDGs「つくる責任つかう責任」それぞれの責任を果たすために必要なこと
SDGs「つくる責任つかう責任」における三陸ラボラトリの取り組み

三陸ラボラトリの取り組みはSDGs12の目標である「つくる責任 つくる責任」以外にも付与しております。
しかしここでは「つくる責任 つかう責任」に絞って解説していきます。
他の目標について気になった方はこちらも合わせてお読みください。
SDGs8【働きがいも経済成長も】とは?具体的な取り組み解説
SDGs14【海の豊かさを守ろう】とは?課題と具体的な取り組みをわかりやすく解説
取り組み内容
東北の沿岸部では生産や加工の担い手不足や海産物の規格外品の廃棄などの問題が起きています。
この問題を解決するため、東北の名産品である「ホヤ」で、三陸ラボラトリが企画し、プロジェクトが異業種との協力で成功しました。
プロジェクトは、サイズが小さかったり、形が悪い規格外のホヤを三陸ラボラトリで剥き身の状態にし、個からグラムに単位を変えて販売するというもの。
嗜好性が高く、捌いたことがない人が多いホヤですが、剥き身の状態であれば台所を汚すことがなく、捌く必要がないためお手軽に買うことができます。
また、ホヤの殻がついたままの状態では、個数での販売形態になるため小さいホヤが混ざっていると購入意欲が低くなってしまうため、卸業者や小売店は小さいサイズのホヤを嫌うのです。
作業をするのは障がいのある従業員と地域のB型事業所などの人たちです。
また、パッケージには知的障害のあるアーティストによるデザインを「岩手県産」という産地表示シールに使用しました。
- 水産資源のロス低減と有効活用
- 販売形態を現代のスタイルに
- 地域産業の持続・維持
- 地元の福祉事業所による就労訓練や社会参加
- 知的障がい者によるアート作品の活用
これにより、地元ならではの人にも環境にも優しい商品開発が実現しました。
プロジェクトの効果と実績
2021年1月から2022年9月までのデータです。
廃棄されるはずのホヤ使用量 | 162t |
剥きホヤ販売本数 | 76,486本 |
のべシール数 | 94,274枚 |
のべ雇用人数 | 11人 |
B型事業所のべ作業時間 | 3,178時間 |
B型事業所のべ工賃 | 95,3250円 |
剥きホヤ売上 | 15,683,712円 |
瓶うに等の他売上 | 43,353,753円 |
販売先
国分東北様、イオン東北様、イオンスーパーセンター様、マックスバリュ南東北様、田清魚店様、清次郎様、魚耕様、新宿伊勢丹様、神文ストア様など多数の販売店様よりSDGsの取り組みと品質、美味しさ、安全性などをトータル的にご評価いただき、販売させていただきました。
SDGs「つくる責任つかう責任」9割が捨てられていた海産物『ホヤ』
そんな東北でしか生産されていないホヤですが、フードロスの問題がありました。
消費者でもあるみなさんはよくわかるかと思いますが、同じ商品が並んでいた時手に取るのは大きい商品だったり、少しでも形がいい商品だと思います。
その結果、スーパーで売れやすいサイズより小さいサイズのホヤはスーパーに卸されることがなくなり、結果的に生産者が全て廃棄していたのです。
さらにホヤのサイズや形を1個1個手にとって確かめて選別するのです。
その量は1日数トンにもなります。
漁師の仕事がどれだけ大変かが理解できるかと思います。
規格外がおよそ9割あった
下の動画は筆者がこのプロジェクトを企画する前に、漁師の皆さん注文していた300kg(売りやすいサイズ)に対して3,000kg(規格外)が出ていたことを初めて知り、携帯で記録したものです。

筆者は衝撃を受けました。そして、この状況をなんとかしなければならないと感じました。
SDGs「つくる責任つかう責任」それぞれの責任を果たすために必要なこと
日本はフードロス問題が多くあり、食生活を便利にすればするほど、そのバランスを取るのは大変になっていきます。
ここからは筆者がこのプロジェクトを通して分かったことを解説していきます。
つくる責任
漁師や生産者、メーカーや小売店までがつくる責任を果たすために、やらなければならないことは以下の通りです。
- サプライチェーンを組み、信頼関係をつくること
- サプライチェーン全体で消費者へどう届けるかを考える
- どう届けるか考えた結果、それぞれの役割を果たす
つくる責任を果たすために必要なことは上記の通りですが、これらを共通認識として持つためには、目的をサプライチェーン全体で揃えることが必要になります。
今までの水産業の仕組みではそれぞれの会社がそれぞれの目的(売上や利益)を持っていたため買う側と売る側の関係となってしまい、信頼関係が構築できず、サプライチェーンが作れなかったのです。
しかしこれからの時代は、生産から販売までが同じ目的を持ち、消費者に対して新たな価値観を見出すことがつくる責任になると考えます。
4年かけて出荷可能になる「ホヤ」
4年後のことを予測することは非常に難しく、生産者と卸業者、販売者が長期的に安定して取り組む環境をどう作るかが、サプライチェーン構築には必要です。
販売者は商品がないと販売することができません。
生産者は販売が不安定だと生産量を考えなくてはなりません。
お互いが切っても切り離せない関係となっていることがわかります。
持続可能な信頼関係の構築
持続可能な信頼関係の構築をする上でやってはいけないことは以下の通りです。
- 嘘をつく
- 約束を破る
- 他社の批判
- 機密情報の漏洩
- 他社を利用する
- 過度な競争心
が挙げられます。
持続可能な信頼関係を築くのであれば上記に注意する必要があります。
つかう責任
つかうのは消費者です。
消費者も意識を少しずつ変える必要があります。
しかし難しく考える必要はなく、現状の問題を知り、普段の生活の中で何かを買うときに、自分と地球にいい商品を選ぶことを心がけるだけでつかう責任を果たすことができます。
フードロスを減らす行動
フードロスの問題は私たちにとってとても身近な問題の1つです。
スーパーで値引きシールが貼られている商品は誰も買うことがなければそのまま廃棄されてしまいます。
しかし、スーパーに商品が並んでいないと私たちの食生活は不便なものになってしまうのも事実です。
ここで答えを導き出すことは難しいですが、まずは知ることが大事だと筆者は考えます。
そして廃棄を減らすための工夫を一人一人が考え、試していくしかないと考えます。
SDGsに取り組んでいるメーカーを選ぶ
現在SDGsに付与した商品が増えており、類似商品と比べて付加価値が高いものがいくつもあります。
値段が高すぎては買いにくいですが、自分が納得できる値段であればできるだけSDGsに取り組んでいるメーカーを選ぶことをおすすめします。
MSC(海のエコラベル)
サステナブル・シーフードとして持続可能な漁業を目指すべく、MSC漁業認証規格があります。
サステナブル・シーフードとは水産資源や海が長期にわたって確保される方法をとっている漁業で獲られた水産物です。
スーパーなどで一般的に売られておりますので見てみましょう。
最後に
今回はSDGs12の目標である「つくる責任 つかう責任」の水産に関わる体験を書かせていただきました。
身近な問題ですので知っていただければと思います。
今回あまり触れなかった福祉のことはまた次の機会に書こうと思います。
ありがたいことに農林水産省が推進している『ノウフク・アワード2022』にて受賞しました。
これは水産の企業では日本初の受賞であり、大変光栄なことです。
企業としてのこれからの役目を果たしつつ、個人でもできるSDGsを知っていただき、楽しく取り組んでいただければと思います。