こんな方におすすめ
- 水福連携の体験談を聞きたい…
- 水福連携の具体的な事例は?
- 水産と福祉がどうやって協働したの?
今回もこんなお悩みについて解説します。
パート1はこちらからどうぞ
https://job-joy-hack.com/experiences-1/
この記事を書いてる人
- 農林水産省推進、『ノウフク・アワード2022』水産企業で歴代初の受賞
- 『とうほくSDGsアワード2023』優秀賞
- 人の心を様々な角度から理解し、導くことが得意
- サラリーマン、経営者の経験(3社)を持つ1児のパパ
この記事を読んでわかること
- 水福連携の具体的な事例
- SDGsと水福連携の関わり
- ビジネスの理想の形
三陸ラボラトリ株式会社の実績と数字に関してはこちらをご覧ください。
https://job-joy-hack.com/sdgs-12/
【水福連携の体験談】水産と福祉の課題

B型事業所に施設外就労で来ていただき、一緒に作業をしている中で福祉の課題が見えてきました。
まずはそれぞれの課題を書き出していきたいと思います。
水産の課題
水産業にはさまざまな課題があります。
水産業の課題というのは業界に限らず、日本の課題でもあります。
今回は水福連携に関わる課題のみ取り扱いますが他にも詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
https://job-joy-hack.com/fisheries-issues/
高齢化と人不足
水産業の大きな課題である高齢化と人不足。
若い漁業者や事業者が少なく、どんどん高齢化が進んでいます。
そして若い人が少ないということは現代の教え方や学び方をできる人が少ないという問題でもあります。
一昔前の教え方といえば、見せて教えるやり方、つまり背中で教えるというやり方がほとんどだったと思います。
そういった環境で覚えてきた世代でもあるので仕方ないですが、現代では時代遅れです。
データに基づき、学ぶ環境を整え、訓練や実習制度を活用しながら知識や技術を学びます。
そのため、何か学ぼうと話を聞いても「うまくやる」やわかっているはずなのに「わからない」と言われなかなか教えてもらうことができませんでした。
一人前になるためには10年や20年かかると言われていた理由がここにあると感じました。
福祉の課題
福祉といってもさまざま種類に分かれるためここでは水福連携に関わる、障害者福祉について解説していきます。
B型事業所の利用者と関わるようになり、また事業所職員との話の中で知った福祉の課題も筆者の目線から解説していきます。
低賃金問題
B型事業所の利用者にはさまざまな人たちがいます。
一般雇用を目指して経験を積んでいる人や働く意味を理解し切れていない人。
賃金より、社会参加を重視している人など多くの考え方が存在しているので、一概に低賃金が悪いともいえないのも事実ですが、生活をしていく上で最も重要な要素はお金です。
B型事業所の存在意義は社会参加や自立支援が挙げられ、お金が少なくても社会参加は果たすことが可能ですが、自立支援では、お金を稼ぐ力を養うことが必要不可欠です。
しかし、自分に合った働き方ややりたい仕事を選ぶことは実際には難しいです。
B型事業所が多くの企業と連携していれば利用者もその中から興味がある仕事を選び、経験することが可能ですが、コロナウィルスの影響等で、企業の受け入れも少なくなってしまいました。
また、間違った考えを持つ企業も多く、人件費を安く抑えることができると思い受け入れようとする企業も珍しくありません。
そんな中で高い賃金で利用者のニーズを満たせる環境を設定することは非常に難しいことです。
支援と配慮の違い
支援とは具体的なサポートを意味し、配慮とは気持ちを理解することを指します。
例えば手が不自由なのでものを取ってあげる行為は支援となり、聴覚過敏の人がいるから大きな音を出さないようにするというのは配慮になります。
企業がB型事業所との連携を考えるのは経営者ですが、実際に利用者に仕事を教えたり、一緒に働くのは従業員という場合が多いです。
そのため、一緒に働く従業員が障害について理解しなければなりません。
そして日本人の場合、障害者に対してのイメージが曖昧な部分があります。
障害者と一緒に働くと聞いて、今でも仕事がいっぱいいっぱいなのにやることが増えるといった間違ったイメージを持ってしまう人は少なくないと思います。
しかし実際はそうではありません。
障害と言っても身体、精神、知的と分かれており、それぞれに必要な配慮が備わっていれば問題ないのです。
このことを知らないがために障害者を一括りにしてしまい、偏ったイメージを持ってしまうのは間違いです。
このことをどうやって一緒に働く人たちに理解してもらえるかがポイントであり、重要なことです。
【水福連携の体験談】取り組んだこと

一緒に作業をする中で水産では人が足りておらず、福祉では連携できる企業を探している事がわかりました。
要は水産の仕事を分かりやすく、誰でもできる作業にする事が出来ればお互いの問題が解決できるのです。
その為に筆者が取り組んだ事は以下の通りです。
ホヤの剥き作業を細分化
ホヤを剥き身にし、グラムに変えて販売する事で原料の廃棄を減らし、SDGs8の「つくる責任 つかう責任」に付与する事は会社の強みでしたが作業工程が多いのが欠点でした。
しかし、あえて細かく作業を分ける事により、なるべく単純作業を増やしました。
シンプルにすることで理解も深まる
そうする事で、利用者のできる作業とできない作業をはっきり分ける事ができ、自分のできる作業だけをやれる環境を作る事ができました。
できる作業をやることにより、作業をある程度任せることが可能になりました。
やりたい作業だけやる
やりたい作業だけできる環境を作る事により、利用者の意欲が上がり、毎日事業所に来れるようになった利用者もいました。
全体を見て行動できる人もいる
最初は簡単で楽な作業に利用者が集中してしまう事が多かったですが、人によっては全体の作業のバランスが悪い事に気がつき、率先して違う新しい作業をする人も利用者もおり、全体を見る事が出来る人を発見する事ができました。
【水福連携の体験談】出来上がった形

上記の取り組みにより、出来上がった形を解説してきます。
この形は水産の大事な部分である安心安全で高品質な提供と、福祉の大事な部分である社会参加や社会経験、さまざまな職業に触れ、自分のやりたいと思う仕事やできる仕事を見つけることなの水産と福祉のバランスをとりながら形になったことを解説していきます。
作業の指導は全て筆者が一人一人行いました。
大学の時に取得していた、中学・高校の保健体育の教員免許と図書館司書の経験が役に立ったと感じています。
触れ合うことでそれぞれのレベルや可能性、仕事に対しての考えなどを言葉だけでなく、熱量や取り組み方で読み解きながら進め、無理なく意欲的にできるような形を意識しながら進めたのも大きな要因だったと感じています。
通年で安定した作業内容
一般的にはホヤが販売されるのは長くてもお盆までというのが普通です。
そして秋になると秋刀魚や鮭などの秋の味覚が始まるのですが、海水温の上昇や海の砂漠化などの海の大きな変化により秋刀魚が減少したり、鮭が獲れなくなったりと水産業に大きな影響を与えていました。
日中の外気温が25℃を超えるとホヤが売れやすいというデータがあります。
最近の秋は秋らしくなく、暑い日が続くのが普通になっています。
そこで我々はホヤを売れるところまで販売する実験をしました。
その結果10月までなんとか売ることができたのです。
時期が長くすることで販売量が増える
これは今までに例がないことだったので生産者たちにも否定的なことを言われました。
昔のようにたくさん魚が獲れた頃ならそんなことをする必要がなかったと思います。
しかし現代では不漁が続いており、水産業者も環境の変化に対応していかなければならないと筆者は強く思います。
そして販売の時期が長くなるということはそれだけ生産者にも還元できるということです。
できる仕事を通年でできる仕組み
そして我々加工業者にとっても大きなメリットがあります。
メリットはこちらです。
できる作業をとことんできる
それは、働く人たちのできる作業を長い期間できるようになる、ということです。
今までは夏の期間しかなかったホヤの剥き作業ですが、我々は通年剥きホヤの作業を行い販売することができました。
通年生出荷により他社との差別化
通年で生出荷をしている業者は調べたところ、ありませんでした。
これは量販店などの販売者からすると珍しさがあり、興味をそそるのです。
結果的に大手量販店は通年での販売をさせていただいておりました。
B型事業所から直接雇用
直接雇用ができた考え方は以下の通りです。
挨拶、返事、自己表現、嘘をつかない
「挨拶、返事、自己表現、嘘をつかない」この4つが出来れば最低限働く事ができることに気がつきました。
自己表現とは指示や説明をした時にわかったかわからなかったかをしっかり伝えることができるかです。
これは筆者の持論であり、障害があるないは関係なく、全ての働く人に共通すると考えます。
そして「気づき、考え、行動する」ことができれば会社内で成長することができます。
要は仕事ができる人になることができます。
働く意欲と能力があれば障害は関係ない
働く意欲が本人にあり、働く能力が備わっている。
また、毎日作業をしに来ており、「挨拶、返事、自己表現、嘘をつかない」ができている場合、B型事業所に留まる理由がなければ雇用するのは当たり前の考えだと思います。
だから我々は本人や事業所職員や事業所所長、ハローワークの障害者雇用の担当の方を交え、話し合い、数名直接雇用に繋げました。
我々は会社のメリットをしっかりと考えた上で雇用を考えているので、人が全く来ない地域でありながら数名雇用できたのは非常に大きな出来事でした。
最後に
水福連携の体験談からわかるように、水産と福祉が協働することでさまざまな課題に対する解決策が見つかることが分かりました。水産業界の高齢化と人不足、福祉の低賃金問題や支援と配慮の違いなどの課題に直面しながらも、シンプルで細分化された作業、やりたい作業だけを行う環境の提供、そして通年での安定した作業内容を確立することで、水産と福祉の両方にとってメリットが生まれました。
このような取り組みは、水産業界の活性化や福祉の自立支援に寄与し、SDGsの目標である「つくる責任 つかう責任」の実現にもつながる重要な事例と言えます。
水福連携は、企業の経営者や従業員、利用者との協力を通じて、お互いの課題を理解し合い、共に成長する新しいビジネスの形を示しています。持続可能な社会の構築に向けて、水産と福祉の連携がますます重要とされる未来を見据えることができるでしょう。